電磁波の遮断は塗料かめっきか?シールド方法の違いについて塚田理研が解説

【電磁波の遮断】塗料とめっきについて解説します

電磁波の遮断には、塗料やめっき等、様々な選択肢があります。

電子機器で使用する電流や電圧信号の中には、他の機器に障害をあたえ、動作に不具合を引き起こす「電磁波ノイズ」が含まれています。

自動車のEV車への移行や、そしてIoT社会化などが加速する現在、電磁波ノイズの制御(EMI/EMS対策)についても取り組みが進んでおり、めっきをはじめ、様々な遮断方法が誕生しています。

電磁波 遮断 塗料 EV車イメージ

今回のコラムのテーマである、電磁波遮断用の「塗料」もそのうちの一つです。

しかし、「めっき」と「塗料」について、どちらも製品の表面に導電性を付与する技術のため、違いがわかりにくいと感じる方も多いようです。

今回は、近年益々需要が拡大している電磁波シールドにおける、「塗料」そして「めっき」の特徴と違いについて、解説をいたします。

電磁波を遮断する「塗料」と「めっき」について

電磁波を遮断する塗料、そしてめっきとは、そもそもどのような技術なのでしょうか。

前述したように、どちらも製品の表面に導電性を付与し、電磁波を遮断する技術のため、混同してしまいやすいと思います。

現在、電子機器の多くは軽量化のためにプラスチック素材が採用されています。

電磁波 遮断 塗料 樹脂

プラスチックは金属と異なり、電磁波を透過させてしまう性質があるため、電磁波ノイズ対策としてプラスチックを導電化させる必要があります。

導電化させる方法として、プラスチック成形品に、導電性を持つ塗料を使用した塗装、またはめっき技術を利用します。

どちらもプラスチック成型品の表面に対して行う加工のため、似通っているように見えますが、それぞれに特徴や違いがあるため、製品の用途や使用環境に合わせて選択する必要があります。

ここでは電磁波を遮断する「塗料」、そして「めっき」の特徴についてご紹介します。

電磁波シールド塗料

電磁波シールド塗料とは、導電性塗料の一種で、電磁波を遮断する効果を持った塗料の事です。

別称として、EMIシールド塗料とも呼ばれています。

塗料の中に銅や銀、金、ニッケルなどの導電性のある粉末(フィラー)、そして粉末の固定の役割にあたるバインダーなどが含まれており、種類によって特徴が異なります。

各メーカーから様々なタイプの塗料が販売されていますが、一般的に塗装した膜に電磁波が当たり、膜中に起こる過電流の誘導にて電磁波を反射し、電磁波ノイズを抑制します。

電磁波シールド塗料の特徴は、プラスチックに付きやすく、塗料によってはスプレーやローラーなどで簡単に塗装できる点が挙げられます。

以下にて電磁波シールド塗料の一般的なメリット、デメリットをまとめました。

メリット
  • 低コスト
  • 設計を変更しなくても良く、自動化も容易
  • 非常に簡易的な方法である
    (スプレー・ローラー等)
デメリット
  • 汎用プラスチックに限定される
  • 必ずしも膜厚と表面抵抗が同じではない
  • 樹脂によって希釈溶剤等の選定が重要
  • 製品の使用温度や環境によっては充分な効果が得られない
  • 防ぎたい周波数帯によっては対応できない場合がある

上記のメリット、デメリットはあくまで一般的な塗料をまとめたものであり、商品の種類、メーカーによっては上記と異なる場合があります。

電磁波シールドめっき

電磁波シールドめっきは製品の表面に金属の皮膜を形成し、プラスチックなどに導電性を付与し、電磁波ノイズを遮断する方法です。

電磁波 遮断 塗料 事例

EMIシールドめっきとも呼ばれており、OA機器や医療機器、また電気自動車など幅広い分野で活用されています。

シールドできる周波数帯は30MHz-6GHzであり、金属と同程度、または金属以上の遮断効果が得られます。

特に自動車は移動をする乗り物であり、振動や温度など、変化する環境に耐えられるシールド方法が求められます。

このため、塗料や導電性のある樹脂、磁性シートなど様々な遮断方法の中でも皮膜特性の高いめっきが適しており、自動車の進化に伴い、めっきの皮膜性能もこれまで以上の向上が求められ、研究開発が進められています。

以下は電磁波シールドめっきのメリット、デメリットです。

メリット
  • 金属と同等(または金属以上)の高いシールド効果
  • 機能性が得られる(耐摩耗性、耐食性など)
  • 均一及び薄膜の膜厚の形成が可能
  • 複雑な形状でもめっきがつけられる
  • 環境面に有利
    (リサイクル性、co2の排出量が塗装より少ない。)
デメリット
  • 塗料と比較してややコスト高。
  • 専用ラインが必要。
    (設備投資面)

電磁波遮断(シールド)の「塗料」と「めっき」の違いとは

電磁波シールド目的の塗料とめっきについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介しました。

塗料、めっきともに母材の表面に導電性のある皮膜を覆う技術のため、一見同じもののように感じられます。

しかし、塗料とめっきは似て非なるものです。

塗料は製品の表面を塗装して処理する方法で、加工が容易であり、低コストである一方、過酷な環境には耐えられない場合があります。

めっきは製品の表面を金属で覆う加工技術であり、薬品を使用するため塗装と比べて高コストですが、金属と同等の機能を付与でき、過酷な環境(高温など)にも耐えられます。

電磁波 遮断 塗料 筐体

また、塗料の場合はシールド効果を得るためにある程度の厚みが必要な場合が殆どですが、電磁波シールドめっきは薄くつけるだけ(※)で高いシールド効果が得られます。

(※難燃ポリカーボネートに無電解銅1μm、防錆として無電解ニッケルめっき0.25μmの場合、30MHz~1GHzの周波数帯で、厚み3mmのアルミ板と同等のシールド効果)

このように違いがあるため、用途や使用環境によって使い分ける必要があります。

当社はプラスチックめっきのパイオニアとして、お客様の使用用途や想定される環境をお伺いし、最適な選択肢をご提案いたします。

電磁波の遮断、電磁波の遮断方法で課題がありましたらお気軽にご相談ください。

なお、例に挙げた無電解ニッケルめっきにつきましては下記のコラムにて詳細をご説明しておりますので、あわせてご覧ください。

無電解ニッケルめっきの特徴やメリット・デメリットについてはこちら

塚田理研は電磁波シールドめっきの加工を承っております

塚田理研は加飾めっきの他、電磁波シールドめっきなど機能めっきに対応しております。

当社は、プラスチックへのめっき加工に特化した専門メーカーとして、装飾めっきや機能めっき、そしてプリント配線板へのめっき技術を柱に、表面処理のトップメーカーとして多様なお客様の要望に応えてきました。

電磁波 遮断 塗料 社屋

電磁波ノイズを遮断し、製品を保護する電磁波シールドめっきにも対応しており、ABS樹脂やエンプラ、スーパーエンプラなど、幅広い素材への加工が可能です。

特に難めっき材であるエンプラ、スーパーエンプラへの加工につきましては、国内トップクラスの規模を持っています。

近年、高機能化や軽量化など、自動車や電子機器などの製品の進化が加速しています。

塚田理研では、このような市場の動向に対応すべく、めっき技術の研究開発にも力を入れており「製品の進化を支える技術」として日々進化を続けています。

また、従来の素材だけでなく、新素材へのテストや試作品の製作にも対応しておりますので、ぜひお問い合わせください。

塚田理研の電磁波シールドめっきの詳細はこちら

今回のコラムでは、電磁波を遮断する方法である「塗料」と「めっき」、この二つの遮断方法の特徴やメリットデメリット、そして違いについてご紹介しました。

両者は製品の表面を膜で覆う技術なので似ているように見えますが、それぞれに特徴があるため、製品の特徴や用途、使用環境などに最適な遮断方法を選択すると良いでしょう。

めっきに関する詳細や、シールド方法(遮断方法)について課題やご不明な点がありましたら、お気軽にプラスチックめっきの塚田理研までお問い合わせください。

【お問い合わせ先】
本社:0265-82-3256
東京営業所:042-444-1287
刈谷オフィス:050-6868-2912
お問い合わせフォームはこちら