六価クロムと三価クロムとは?めっきの仕上がりやクロメート処理との違いを解説

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六価クロムと三価クロムの基本知識、違いについて

クロム(Cr、元素番号24番)は、耐食性や硬度に優れた特性を持っている金属元素であり、幅広い用途で使われています。

クロムは化学的にさまざまな形態をとることができ、その中でも特に知られているのが六価と三価クロムです。六価クロムと三価クロムはクロム原子が持つ電子の数(=酸化数)によって分類され、種類によって性質や安全性、用途にも大きな違いがあります。

ここでは六価クロムと三価クロムの特徴と規制状況について解説します。

六価クロム

六価クロムとは、クロムが6つの電子を失った状態の化合物で、強い酸化力と高い耐食性を持ちます。人工的に作られるケースが一般的で、ステンレス製品やクロムめっきなどの工業用途で長年広く使用されています。

優れた特性が活用される一方で、六価クロムは毒性が強く、国際がん研究機関による評価では「ヒトに対する発がん性がある」と分類されています。吸入や皮膚接触によりさまざまな健康被害を引き起こす可能性があるため、取り扱う際には厳格な管理が必要です。

六価クロムの毒性や環境影響が問題視され、欧州連合(EU)は厳格な規制を導入しており、RoHS指令やREACH規則などで制限されています。

めっきにおいてはクロムめっき、またプラスチックめっきではエッチング工程にて使用するケースもあります。
(※最終製品に六価クロムを含有しないため、規制の対象外です)

三価クロム

三価クロムとは、クロムが3つの電子を失った状態の化合物を指します。自然界にも存在し、土壌や水、食品、さらには人間の体にもわずかな量ではありますが含まれています。

毒性は六価クロムと比較すると大幅に低く、安全性が高いことが特徴です。現在の主要な環境規制では三価クロムは一般に規制対象外とされ、国際がん研究機関の評価でも「発がん性が認められていない」と分類されています。これにより、人間や環境への影響が低いと考えられています。

環境負荷が少ないことから、三価クロムは六価クロムの代替として注目されており、めっきにおいても代替技術として活用されています。

クロムめっき(三価クロムと六価クロム)の種類や違い、規制について

クロムめっきには「六価クロムめっき」と「三価クロムめっき」の二種類があります。

それぞれの特長や違い、規制についてご紹介します。

六価クロム 三価クロム 表面処理 処理

●六価クロムめっき 三価クロムめっきの違い(プラスチックめっきの場合)

六価クロムめっき 三価クロムめっき
耐食性
硬度
耐熱性
密着性
析出速度 速い 遅い
結晶構造 結晶性 非晶性
色調 青白いシルバー シルバー
(※)
厚付け 不可
RoHS規制 対応可 対応可
用途 加飾めっき
機能めっき
加飾めっき

※メーカーによって色味が異なります。当社では、六価クロムめっきの色味に近い白色、深みのある色合いが特徴の黒色三価クロムめっきに対応しております。

六価クロムめっきは光沢のある青白いシルバー色が特徴です。膜厚によって装飾クロムめっきと硬質クロムめっきに分類され、用途に応じて使い分けられています。

三価クロムめっきは毒性が低いため、六価クロムめっきの代替として活用されています。析出に時間を要するため、用途は装飾目的が一般的です。

両方とも硬度や耐食性、めっきの密着性に優れており、美しい色合いが特長ですが、色のニュアンス、厚付けが可能かどうかなどの点で違いが挙げられます。

塚田理研ではどちらにも対応しております。また、低環境負荷の「六価クロムフリーめっき工法」を提供しておりますので、グリーン調達や低環境負荷の技術をお探しでしたら、お気軽に当社までお問い合わせください。

クロムめっきはRoHS指令(規制)の対象?

冒頭で六価クロムは規制の対象であることについて触れましたが、六価クロムを使用したクロムめっきも規制の対象となるのでしょうか。

結論から述べると、「規制の対象外」です。

六価クロムと三価クロム、どちらを使用した場合でも、最終的に析出されるのは金属クロム(ゼロ価クロム)であり、有毒な六価クロムが製品表面に残るわけではありません。そのため、六価クロム、三価クロム問わず、クロムめっきはRoHS指令に対応した技術であり、規制対象外です。

また、プラスチックめっきでは、エッチング工程(表面を粗化し、密着性を向上させる工程)で六価クロムを使用する場合がありますが、洗浄により最終製品に含まれないため、この場合も規制の対象ではありません。

六価クロム 三価クロム 加工事例

クロメート処理とクロムめっきの違いについて

クロムを使用するという共通点から、クロムめっきはクロメート処理と似た印象を持たれることがありますが、この二つの処理は別物です。

クロムめっきは金属表面に金属クロムの皮膜を形成する電気めっき処理です。

高い硬度と光沢、耐摩耗性や耐食性を付与できるため、外観部品から工業用途まで幅広く使われています。六価クロム、三価クロム問わず析出しためっき皮膜はゼロ価クロムであるため、RoHS指令の規制対象外です。

一方、クロメート処理とは、金属の腐食を防ぐために行われる化成処理の一種で、金属表面に保護皮膜を形成させます。

亜鉛めっき後に施す処理として広く利用されており、耐食性を向上させる役割を担います。処理後の被膜には六価クロムが含有されていることから、RoHS指令の規制対象となります。

クロムめっき
六価クロム 三価クロム 加工事例

クロメート処理
六価クロム 三価クロム クロメート処理

※現在は三価クロムを使用した三価クロメート処理もあります。こちらはRoHS指令の対象外です。
※プラスチックめっきにおいてはクロメート処理は実施しません。

このように、処理の目的や最終的な皮膜の状態、また規制の対象かどうかなど、大きな違いがあります。

塚田理研の低環境負荷のめっき技術について(六価クロムフリー工法)

塚田理研では、六価クロムを使用した従来のクロムめっきに加え、環境に配慮した六価クロムフリー工法にも対応しており、ニーズに応じた技術提供を行っています。

六価クロムは優れた特性を持つ一方で、環境や人への影響が懸念されており、より安全な代替技術への移行が求められています。

このような背景を踏まえ、当社では「クロムフリーエッチング工法」と「三価クロムめっき」による六価クロムフリー工法を開発し、量産対応の自動ラインも整備しています。

六価クロム 三価クロム 自動めっきライン クロムフリー

●クロムフリーエッチング工法

プラスチックの表面を粗化するエッチング工程において、六価クロム不使用の工法の提供が可能です。

  • 過マンガン酸エッチング
  • オゾン水によるエッチング
  • 紫外線(UV)照射による表面改質

従来の密着性を維持しながら、環境負荷を大幅に抑えることが可能です。

●三価クロムめっき

毒性の低い三価クロムを使用することで、安全性と環境配慮を両立しためっき加工が可能です。

従来の三価クロムめっきは、六価クロムと比べ「耐食性」「色味」において課題がありましたが、当社独自の技術により、六価クロムと同等の耐食性、美しい色合い(白色・黒色)の表現を実現しており、六価クロムの代替として遜色のない品質を提供しております。

六価クロム 三価クロム 技術 加工事例

三価クロムめっきについて

塚田理研では、環境と品質の両立を目指し、今後も低環境負荷技術の開発に取り組んでまいります。詳細につきましては、お気軽にお問い合わせください。

クロムめっき(六価クロム、三価クロム)のご相談は塚田理研まで

クロムめっきは、美しい外観と高い耐食性から、さまざまな分野で活用されている表面処理技術です。

塚田理研では、六価クロム、三価クロムの両方のめっきに対応しており、お客様のニーズや用途に応じた最適なご提案が可能です。

ご提案事例:海外の法令、規格に対応可能なめっきプロセス(三価クロム)のご提案

環境への配慮が求められる現在、塚田理研ではクロムフリー工法の導入や技術開発にも積極的に取り組んでおり、低環境負荷の表面処理を実現しています。一方、六価クロムめっきを採用する場合においても、外部へ流出しないよう厳重な管理体制のもとで運用しており、法令遵守と安全性の確保に努めています。

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