三価クロムめっきの膜厚について
環境への配慮が求められる中、従来の六価クロムを用いたクロムめっきに代わる技術として「三価クロムめっき」が注目され、さまざまな業界で切り替えが進められています。
三価クロムめっきは、従来技術と遜色ない外観、機能が得られますが、膜厚については従来技術と異なるため、用途によっては注意が必要です。
めっきの膜厚は、製品の機能面(耐摩耗性、耐食性など)や寸法精度に影響を与える重要な要素です。
本コラムでは、三価クロムめっきの膜厚や皮膜特性について詳しく解説するとともに、塚田理研の「クロムフリーめっき工法」についてご紹介します。
三価クロムめっき、六価クロムめっきの膜厚や皮膜特性の違い
三価クロムめっきと六価クロムめっきは、いずれも金属クロムの皮膜を形成する技術ですが、膜厚や皮膜特性に若干の違いがあります。以下の表に、違いをまとめました。
※以下の膜厚などの各項目は、当社が提供するプラスチックめっきに関する情報です。
●三価クロム、六価クロムめっきの違い
三価クロムめっき | 六価クロムめっき | |
膜厚 (装飾目的) |
0.1μm~0.2μm | 0.1μm以上 |
膜厚 (機能目的) |
– | 2μm以上 |
厚付け | 不可 | 可 |
析出速度 | 遅い | 速い |
色 | 青みのあるシルバー | 黄み、黒味のあるシルバー |
耐食性 | 〇 | ◎ |
硬度 | ◎ | ◎ |
耐熱性 | 〇 | 〇 |
結晶構造 | 非晶性 | 結晶性 |
RoHS指令 | 対応 | 対応 |
膜厚の厚付けは難しいため、装飾用途が一般的
三価クロムめっきは従来技術である六価クロムめっきと比べても遜色のない外観性や機能性が得られる技術です。
しかしその一方で、硬質クロムめっきのように膜厚を厚く形成することが難しく、機械的強度や耐摩耗性などの機能性を重視した用途には適していません。
そのため、三価クロムめっきは装飾用途に使用されることが一般的であり、自動車の車内装部品、車外装部品や家電製品の外装部品など、外観品質が重視される分野で広く採用されています。
三価クロムめっきとは
これまで三価クロムめっきの膜厚、皮膜特性について説明してきましたが、ここでは改めて「三価クロムめっきとは何か」についてご紹介します。
三価クロムめっきとは、三価クロム化合物によるクロムめっきのことです。三価クロムそのものは自然界に多く存在し、健康の維持に必要なミネラルのひとつとしてヒトの体の中にも含まれています。
従来技術に比べ、作業環境への安全性が高く、環境への影響も低減できることから、持続可能なクロムめっきとして近年需要が高まってきています。
しかし前述の通り、析出に時間を要するため、膜厚を厚くすることが難しく、現在は主に装飾用途として利用されることが多い技術です。プラスチックめっきにおいては、自動車の車内装部品・車外装部品で多くご採用頂いております。
三価クロムめっきのメリットとデメリット
三価クロムめっきのメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット |
|
デメリット |
|
最終製品に六価クロムが含まれていないだけでなく、製品の製造プロセスにおいても六価クロムを使わないモノづくりが世界的に求められています。このようなニーズに対して、三価クロムめっきは有効な選択肢であり、近年では従来技術からの切り替えが進んでいます。
三価クロムめっきと三価クロメート処理との違い
三価クロムめっきと三価クロメート処理は、いずれも「三価クロム」という言葉を含むため、間違えて認識されることがあります。しかし、この二つは工程内容も目的も大きく異なる技術です。
三価クロムめっきは、金属クロムそのものを電気めっきにて析出させ、製品表面にクロムの層を形成する処理です。主に装飾性の向上や耐食性の付与を目的として使用されます。
一方、三価クロメート処理は、金属表面に「三価クロムを含む化成皮膜」を形成する技術です。耐食性の向上や防錆効果を目的とし、主に亜鉛めっきなどの上に処理が行われます。
尚、プラスチックめっきではクロメート処理は三価、六価クロム問わず実施しません。
塚田理研の環境対応型めっき「クロムフリーめっき工法」
当社は六価クロムと三価クロム、どちらのめっきにも対応しております。
三価クロムめっきは、従来技術と同等の外観性や機能性が得られ、色も白色と黒色(3種)に対応しており、意匠性が求められる製品にも適しています。
また、光沢感の調整によって質感を変化するサテン調めっき、またイオンプレーティングによるめっき加飾にも対応しております。また、処理後の塗装やメタル感を演出するヘアライン加工、アンティーク調などの表現も可能です。
色調について、以下のコラムで詳しくご紹介しています。こちらも是非ご覧ください。
更に、当社ではエッチング工程で六価クロムを使用しない「クロムフリー工法」も提供しており、三価クロムめっきと組み合わせることで更に低環境負荷な表面処理を可能としております。
●クロムフリーめっきライン「Eライン」(量産対応)
自然と人にやさしい技術でありながら、従来のクロムめっきと同等の品質を実現いたします。
クロムめっき(三価・六価)のご相談は塚田理研まで
三価クロムめっきの膜厚について解説してきました。当社では、冒頭でもご紹介した通り、膜厚は0.1μm~0.2μmにて処理しております。
三価クロムめっきは、環境への配慮が求められる現代において、重要な代替技術として注目されていますが、膜厚を厚くつけることは一般的でないことから、装飾用途で多く活用されています。このため、用途や要求仕様に応じて六価クロムめっきを選択するケースも依然として存在します。
塚田理研では、三価クロム・六価クロム、どちらのクロムめっきにも対応しており、製品の使用環境やご要望に応じた最適な技術をご提案しています。また、製造プロセスで六価クロムを使わない「クロムフリーめっき工法」も提供可能です。
従来技術はもちろん、三価クロムめっきや膜厚に関してご不明な点や課題がございましたら、ぜひ塚田理研までお問い合わせください。
【お問い合わせ先】
本社:0265-82-3256
東京営業所:042-444-1287
刈谷オフィス:050-6868-2912
お問い合わせフォームはこちら