めっきプロセスにおける環境負荷について
めっきは「製品の表面を金属で覆う表面処理技術」です。主に化学反応を利用して行われ、工程には多くの薬品や電力を使用します。
近年では、自然環境への配慮があらゆる産業で求められるようになり、めっき業界においても環境負荷を低減する取り組みが広がっています。
めっきに関わる環境負荷の代表的な例として、以下が挙げられます。
(1)CO₂排出
めっきには大量の電力が必要であり、間接的に温室効果ガスの排出につながります。
(2)薬品の使用
強酸、強アルカリ性の薬品、シアン化合物、カドミウム、六価クロムなどの有害物質が使われる場合があり、取り扱いには厳格な管理が求められます。
(3)ガスの発生
めっき中には薬品の反応によってミストや有害ガスが発生することがあり、作業者への影響を防ぎ、大気への拡散を防ぐ設備が必要です。
(4)排水の処理
めっき液の洗浄などで発生する排水には、金属イオンや薬品が含まれるため、環境に影響を与えないよう浄化処理が不可欠です。
塚田理研では、プラスチックめっきのトップメーカーとして、環境保全のための設備導入と低環境負荷なめっき技術の提供という二つの側面から、持続可能な生産活動に取り組んでいます。
めっきが関係する環境規制(RoHS指令・REACH規則など)について
製品にめっきを施す場合(特に海外輸出を行う製品)、EUをはじめとする国際的な環境規制への対応が求められます。環境規制の代表的なものとして「RoHS指令」と「REACH規則」があります。
RoHS指令
EUで販売される電気・電子機器に対して、有害な化学物質の使用を制限する規制です。対象物質には鉛、カドミウム、六価クロムなどが含まれており、これらを一定濃度を超えて含有する製品は、原則としてEU域内で販売できません。
REACH規則
EU内で製造または輸入される「すべての化学物質」に関して、その登録・評価・制限などを義務づける規制です。製品に含まれる物質が指定されている高懸念物質に該当し、一定の条件を満たす場合は、情報開示や届出等の義務が発生します。
このように、製品にめっきを施す場合、使用する薬品や金属成分が各種規制に該当しないかどうかを確認し、必要に応じて代替技術を選ぶことが重要です。
塚田理研の環境を配慮した設備、取り組みについて【サステイナビリティ】
塚田理研の本社工場は、中央アルプスと南アルプスに囲まれた自然豊かな長野県駒ヶ根市にあります。清らかな空気と水に恵まれたこの地は、当社にとって事業活動とともに、大切にすべき自然環境です。
その理念のもと、当社では環境に配慮した工場設計や設備投資を積極的に行ってまいりました。
塚田理研の環境への取り組みの一例
- 大気洗浄装置の導入
- 排水浄化システムの整備
- 薬液の漏洩を防ぐ床構造
- 再生可能エネルギーの活用
- プラスチックめっき部品のリサイクル
上記の取り組みについて、詳しくご紹介します。
大気洗浄装置で綺麗な空気だけを排出
めっき処理の際、ミストや有害なガスが発生することがあります。そのまま大気中に放出すれば、作業環境への悪影響だけでなく、周辺地域にも影響を与えてしまう恐れがあります。
当社では、こうしたリスクを防ぐため、各めっき槽の上部に排気口(局所排気ケーシング)を設置し、発生したミストや有害なガスを即座に吸引。吸い込まれた気体は排気ファンを通して大気洗浄装置(スクラバー)へ送られ、中和・浄化されたうえで工場外へ排出されます。
作業者や周囲環境への影響を防ぐため、排出される空気の質にも徹底した配慮を行っています。
クリーンな浄化水のみを放流!徹底した排水の浄化システム
めっき工程では大量の水を使用するため、金属イオンや油分、薬品などを含んだ工業排水が発生します。そのまま排出すれば、環境への深刻な影響を与えかねません。
当社では、めっきで使用した水を排水する際、それぞれの金属イオンに合わせた回収装置を用いて、スラッジを除去したのち、排水処理装置で水を浄化します。そして、自然に返して問題のないクリーンな水だけを河川へと放流しています。
また、水資源の保全のため、工業排水のリサイクルにも取り組んでいます。イオン交換式水リサイクル装置にて浄化した水を工場で再利用し、低環境負荷なモノづくりを目指しています。
めっき液の地下浸水による公害事故を防ぐ工場設計
めっき液にはさまざまな物質が含まれており、万が一漏れ出すと、地下水や土壌への影響が懸念されます。中でもタンクの破損などによる床面からの地下浸水は、公害事故につながる重大なリスクです。
当社では、このようなリスクを未然に防ぐため、工場の床面を耐薬品塗料でコーティングし、その上に塩ビニールシートを敷いた二重構造を採用しています。
さらに、万が一めっき液が漏れてしまった場合に備え、床に漏れた液体はすべてリサイクル施設へとつながる地下ピットに集まる構造となっており、外部への流出を確実に防ぐ設計となっています。
このように、環境保全と安全対策を両立した設備の整備に取り組んでいます。
Co2排出削減に向けた取り組みも積極的に実施
当社では地球温暖化の要因とされるCO₂排出の削減にも積極的に取り組んでいます。
本社では屋上や社員駐車場の屋根を活用し、太陽光パネルを設置することで、再生可能エネルギーによる自社発電を行っています。電力の一部を太陽光でまかない、化石燃料への依存を低減することで、温室効果ガスの排出を抑えています。
また、井水を利用した冷却空調システムや高効率な設備機器の導入も進めており、工場運営におけるエネルギー使用量の削減に努めています。
さらに、営業活動に使用する車両にはハイブリッド車を採用しており、移動による環境負荷の軽減にも配慮しています。
プラスチックめっき部品のリサイクル
プラスチックめっき部品やプリント配線板には、金・パラジウム・ニッケル・銅といった多様な金属が使用されています。しかし従来、これらの部品はリサイクルが難しいため、多くの場合、産業廃棄物として埋立処分されてきました。
塚田理研では、こうした状況を改善すべく、プラスチック部と金属めっき部を独自の手法で分離・回収し、それぞれを再資源化する技術を確立しました。これにより、使用済み部品を「捨てる」のではなく「資源として活かす」よう、取り組んでいます。
低環境負荷のめっき技術も開発
近年、環境保全への意識が世界的に高まるなか、低環境負荷な技術は「選択肢のひとつ」から「標準的な選択肢」へと移行しつつあります。
特に、環境への配慮が強く求められる分野においては、環境対応の可否がブランドイメージや選定の判断につながる場面が増えています。
塚田理研はプラスチックへのめっきメーカーとして、低環境負荷なめっき技術の開発にも積極的に取り組んでいます。
ここでは、当社が提供する具体的な技術の一例をご紹介します。
低環境負荷なクロムフリーめっき技術
従来のプラスチックめっきでは、前処理や表層処理の工程で六価クロムを使用するのが一般的でした。
しかし、六価クロムは人体への影響、また環境負荷の大きい物質であることから規制が強まっており、代替技術のニーズが高まっています。
当社はクロムフリー技術の研究開発に取り組み、六価クロムを使用しない前処理および表層めっき(六価クロムめっきの代替技術)を実現。業界に先駆けてクロムフリー対応の量産ライン「Eライン」を導入し、継続的な製品供給を可能とする体制も整えています。
●クロムフリーエッチング工法
過マンガン酸やオゾン(改質水)、UV照射などによってプラスチックの表面を粗化。六価クロムを用いた処理と同等の密着性が得られ、高品質なめっき処理が可能です。
●三価クロムめっき
六価クロムを用いたクロムめっきの代替技術として、三価クロムめっきの提供が可能です。
密着性や耐食性、硬度等の機能性は従来と遜色なく、美しい金属皮膜が得られます。
当社では白色・黒色(3種類)に対応しており、さらにサテン調など表面の質感に変化を持たせる仕上げも可能です。
rCF材へのめっき技術
当社では、リサイクル炭素繊維「rCF」を用いた樹脂材料へのめっきにも対応しています。
rCFは環境負荷の低い素材として注目されていますが、従来のrCFは「強度の低下」や「高コスト」といった課題を抱えていました。
しかし、当社のパートナー企業は、バージン材と同等の強度を持ちつつ、コストを抑えた高性能なrCFの開発に成功し、環境への配慮と実用性を両立した樹脂材料の実現が可能となりました。
当社ではこのrCFを用いた材料に対し、安定した密着性と機能性を備えためっき技術を提供しています。
持続可能なモノづくりを支える低環境負荷な選択肢として、rCF材へのめっきもご提案可能です。詳細はお気軽にお問い合わせください。
低環境負荷のめっき技術のご相談は塚田理研まで
持続可能なものづくりへの関心が高まるなか、めっき技術にもより一層の環境配慮が求められるようになっています。
塚田理研では、クロムフリーめっきやrCF材への対応など、低環境負荷を実現するさまざまな技術を開発し、提供しています。
また、設備面でも排水・排ガス処理、再生可能エネルギーの活用などに積極的に取り組んでおり、製品だけでなく製造プロセスそのものの環境負荷低減にも力を入れています。
「環境に配慮しためっきを導入したい」「取引先から環境配慮への取り組みを求められている」などのご相談がありましたら、以下の窓口までお気軽にお問い合わせください。
【お問い合わせ先】
本社:0265-82-3256
東京営業所:042-444-1287
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