六価クロムめっきの毒性は?安全性、規制についてを解説
六価クロムめっきの毒性について、詳しくご紹介します。
六価クロムめっきとはクロムめっきの1種であり、1920年代にアメリカで誕生しました。日本に伝わってきたのは1930年頃とされ、耐食性が高く見た目も綺麗なため、工業用途のほか、自動車部品などでも使われてきました。
めっきの析出速度も速く利便性に優れていますが、処理の工程で有害物質である「六価クロム」を使用するため、毒性に不安を感じる方もいらっしゃるようです。
今回は六価クロムの基本的な情報や毒性、まためっきに利用した場合の毒性(安全性)について詳しくご紹介します。
六価クロムとは?
六価クロムとは、クロムの酸化状態のひとつで、クロムの状態から6つ電子を失った状態を指します。人工的に作られることの多い物質で、優れた耐食性を持っており、めっきや顔料などで広く使われています。
利便性の高い物質である一方、極めて高い酸化力を持っており、環境や人体への影響が大きい一面もあります。毒性の高い物質であるため、取り扱いには厳重な管理が求められます。
クロムには六価クロムの他にも毒性の低い三価クロムも存在し、現在はより安全性の高い三価クロムへの切り替えが進められています。
※六価クロムはめっき工程(前処理)においても使用する場合がありますが、最終製品には残らないため、毒性はありません。
六価クロムの毒性と人体、環境への有害性
六価クロムは高い酸化力があるため、人体および環境に対して深刻な影響を及ぼします。
●毒性による人体への影響
長期的なばく露によって健康被害につながる可能性があります。
- 皮膚のかぶれ、炎症
- アレルギー性皮膚炎
- 呼吸器系疾患(喘息など)
- 鼻中隔穿孔
- がん(※)
- 男性不妊 など
※国際がん研究機関(IARC)では「ヒトに対して発がん性がある」と分類されています。
●毒性による環境への影響
- 水質汚染
- 土壌汚染
- 大気汚染 など
六価クロムは毒性が強いため、一度環境中に流出すると自然分解されにくく、長期的に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、近年では六価クロムを使用しない製造工程の導入や、三価クロムなど低毒性への変更が進められています。
六価クロムめっきの安全性について
六価クロムの基本的な情報や毒性についてご紹介しましたが、懸念すべき特徴があることから、安全性についてご心配されるかもしれません。
めっきの場合、工程で六価クロムを使用しますが、最終的には金属クロム(ゼロ価クロム)に還元するため、毒性はありません。安全にお使いいただけます。
●めっき工程で使用する六価クロム
(1)エッチング(プラスチックめっきのみ)
プラスチック表面の粗化(エッチング)を目的に使用する場合がありますが、洗浄をするため残りません。
(2)表層のクロムめっき
めっき金属の析出で使用しますが、金属クロム(ゼロ価クロム)に還元するため、最終製品に六価クロムは存在しません。
よくクロメート処理と混合されますが、クロメート処理の場合は六価クロムの耐食性を活かした化成処理となりますので、こちらには六価クロムが含まれています。
(毒性の低い三価クロメート処理も存在します。)
六価クロムめっきはRoHS指令の対象?
六価クロムは、RoHS指令の特定有害物質に指定されています。
RoHS指令は特定有害物質の使用を制限するもので、設定された最大許容濃度を超える製品をEU加盟国で販売することは禁止されています。違反した場合、製品の回収義務や罰則が科される可能性があるほか、状況によってはEUで製品の販売ができなくなってしまう恐れがあります。
これまでもご紹介した通り、六価クロムめっきは工程中に六価クロムを使用しますが、析出されるめっきは金属クロムとなります。このため、RoHS指令の観点からは問題ない技術とされています。(RoHS指令の規制対象外)
ただし、六価クロムの使用を廃止する動きが進んでおり、クロムめっきにおいても毒性の高い従来技術に代わって、より毒性の低い三価クロムを用いた環境負荷の少ない工法が求められています。
三価クロムめっきとの違いと毒性の比較
毒性の低さから、三価クロムめっきは六価クロムめっきの代替技術とされており、近年切り替えが進んでいます。
●三価クロムめっきとは
三価クロムは六価クロムと異なり、自然界に存在する物質です。人体にも微量に含まれており、健康に欠かせないミネラルとして知られています。
毒性が低いクロムであるため、使用に関する規制もありません。
めっきの違いとしては、色と機能、用途で違いが挙げられます。
●六価クロムめっき・三価クロムめっきの違い
六価クロムめっき | 三価クロムめっき | |
色 | 青白さがあるシルバー色 | 黄み、或いは黒みのあるシルバー色(※) |
耐食性 | ◎ | 〇 |
厚付け | 可能 | 不可 |
目的 | 機能めっき 加飾めっき |
加飾めっき |
※プラスチックめっきの場合
このような違いはあるものの、装飾目的で使用する場合には、どちらも大きな差は見られません。
当社の三価クロムめっきは、従来技術と遜色のない技術として、多くのお客様にご採用頂いております。
当社のクロムめっき(六価クロム・三価クロム)と環境への取り組みについて
塚田理研では、六価および三価いずれのクロムめっきにも対応しています。
六価クロムを扱う際、社外に流出しないよう、厳重な安全対策を行っているほか、六価クロム不使用の技術として「クロムフリー工法」の提供も行っております。
●塚田理研のクロムフリーめっき工法
【エッチング】
- 過マンガン酸エッチング
- オゾン水(改質水)
- UV
【クロムめっき】
- 三価クロムめっき
エッチング工程では従来の六価クロムを使わず、低環境負荷のエッチング工法にて処理します。複数の選択肢をご用意しており、素材やご要望に応じた工法にてエッチングし、高密着なめっきを実現します。
また、表層のクロムめっきでは三価クロムめっきを採用しており、耐食性や外観性など、従来技術の特長をそのままに、環境にやさしいクロムめっきの提供を可能としております。
クロムフリーの全自動めっきライン(Eライン)も設備しておりますので、安定した品質で量産にも対応しております。
毒性の低い低環境負荷のめっき工法をお求めでしたら、是非お気軽に当社までご相談ください。
6価クロムめっきを扱う際の安全対策(設備)
当社では従業員と環境を守るための設備、体制を整えております。
●浄化したきれいな空気だけを排出
全てのめっき槽の上部には排気口を設置しており、全てのミストを吸い込み、大気洗浄装置スクラバーにて浄化しています。浄化したきれいな空気だけを排出し、大気汚染を防いでいます。
●作業場の大気検査を実施
六価クロムを扱う現場では、定期的に第三者機関による六価クロム濃度測定を行っております。法で定められている0.05mg/㎥に対し、平均0.005mg/㎥と低濃度な環境となるよう、管理しています。
●廃液によるリスク管理も徹底
当社ではめっき液の漏れによる地下浸透などの事故を防止するため、めっきタンクの下の床には全て耐薬品性塗料を塗布しているほか、上部に塩ビシートを敷き、地下浸透を防いでいます。
更に、万が一めっき液が床に漏れた場合の備えとして、床に流れる液体は全てリサイクル施設の地下ピットへ落ちる構造となっています。
このような設備や取り組みを行っており、環境へ漏れない体制を構築しています。更に詳しい情報は当社のサステナビリティのページをご覧ください。
六価クロムや環境対応型めっき技術のご相談は塚田理研まで
六価クロムの毒性、また六価クロムめっきの毒性や安全性について解説しました。
これまでご紹介した通り、六価クロムめっきは金属クロムに還元するため、処理後の製品に毒性はありません。また、RoHS指令にも対応しています。
しかし、最終製品に六価クロムが残らないとしても、現代は有害物質を使わないモノ作りのニーズが高まっており、めっきにおいても六価クロムから三価クロムへの変更が進んでいます。
当社では、どちらの技術にも対応しております。クロムめっきのご依頼先をお探しでしたらお気軽に以下の窓口までお問い合わせください。
【お問い合わせ先】
本社:0265-82-3256
東京営業所:042-444-1287
刈谷オフィス:050-6868-2912
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