カーボンナノチューブとめっきの活用について
カーボンナノチューブ(CNT)は強度、導電性、熱伝導性などの機能に優れており、活用方法が研究されている素材です。さまざまな活用方法が検討される中、めっき技術の活用の研究も進められています。
代表的なものとして、金属と一緒に皮膜としてカーボンナノチューブを析出する複合めっき、そしてカーボンナノチューブの表面を金属でコーティングする技術が挙げられ、一部の用途では実用化が進んでいます。
今回のコラムはナノ素材「カーボンナノチューブ」をテーマに、研究開発が進む複合めっき、そしてカーボンナノチューブへのめっきについてご紹介します。
カーボンナノチューブ(CNT)とはどんな素材?
カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube、略:CNT)とは、炭素のみで作られたナノ素材です。(※ナノ素材とは100nm(ナノメートル)よりも小さい物質や構造体のことです)
カーボンナノチューブの構造は、チューブ状(筒状)の形状をしており、このチューブの層によって種類があります。1つのみの層の場合は単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、複数の層の場合は多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と呼ばれており、一般的に使われているのは多層カーボンナノチューブとされております。
カーボンナノチューブは軽くて強度が高く、導電性や熱伝導性に優れている素材であるため、他の素材(樹脂など)と複合することで、機能性に優れた素材を作り出すことができます。カーボンナノチューブを用いた複合材は半導体部品、リチウムイオン電池(導電助剤)などで応用が進んでおり、スポーツ用品などの製品での活用が期待されています。
めっきにおけるカーボンナノチューブについて
カーボンナノチューブは1990年代に発見された素材で、優れた特性を持っていることから次世代の高機能素材として注目されています。現在ではさまざまな応用技術の研究がされており、めっき分野でも特性を活かした技術開発が積極的に進められ、注目を集めています。
めっき分野におけるカーボンナノチューブの活用は主に以下の2種類が挙げられます。
(1)複合めっき材としての利用
(2)カーボンナノチューブ表面へのめっき(めっきによる材料の作製)
ここでは簡単ではありますが、それぞれの概要についてご説明しましょう。
(1)複合めっき材としての利用
複合めっきとは、めっきの皮膜に他の微粒子を共析させる手法のことです。共析させる粒子として、ダイヤモンドやPTFE、炭化ケイ素(SiC)等が挙げられ、これらをめっき皮膜に共析させることで皮膜特性の向上が可能となります。
この複合めっきで、カーボンナノチューブを共析させる技術の開発が行われています。カーボンナノチューブを複合めっき材として利用することで、摺動性や導電性、耐久性の向上が可能となるため、電子部品をはじめとしたさまざまな製品への活用が期待されています。
現段階では、銅や無電解ニッケルめっき(Ni-P)などの複合めっきが実現している他、サイズの異なるカーボンナノチューブを用いた複合めっきなどが検討され、一部実用化されています。
(2)カーボンナノチューブ表面へのめっき
カーボンナノチューブそのものへのめっきによる「材料の開発(新素材開発)」に関する研究も進んでいます。
優れた導電性、耐熱性を持つカーボンナノチューブにめっきを施すことで、素材に金属ならではの特性(耐食性、接合性など)を付加し、高機能な複合材料を作製することが可能となります。
金属の特性を付加したカーボンナノチューブは、金属と樹脂の接合材料や電子部品の材料、蓄電池材料としての活用が期待されており、その他の分野における応用も期待されています。
塚田理研はVGCFへのめっきを実現
塚田理研は、信州大学工学部との連携により、カーボンナノチューブの一種であるVGCF(カーボンファイバー)への無電解ニッケルめっきによるニッケルコーティングに成功いたしました。
●VGCF
●ニッケルをコーティングしたVGCF
VGCFとは気相成長法炭素繊維のことであり、カーボンナノチューブの一種です。
無電解ニッケルめっきによって得られたVGCF/Ni複合体は、樹脂への複合材料として用いることで、電磁波シールド性、強度を持つ素材の作製が可能となります。
従来のVGCFを複合材料として樹脂に用いると、界面接合をせず糸の様に絡まってしまい、分散しにくいため、機能や強度に課題がありました。
しかし、ニッケルでコーティングしたVGCF材であれば、従来の課題を解決し、さまざまな用途での活用が可能となります。
想定される用途
VGCF/Ni複合体は樹脂と混ざりやすく、また繊維が樹脂から落ちることを防げることから、従来のVGCF樹脂複合材料と比較すると機能性が高まり、さまざま分野、用途での活用に期待できます。
期待できる用途の一例として、CF(炭素繊維)を用いたノートパソコンなどの筐体が挙げられます。筐体に使用してきたCF樹脂複合材料をVGCFに変更することで、剛性をはじめとした機能を向上する事が可能です。
また、めっきによって導電性も向上するため、電磁波シールド性を求める分野においても活用が期待できます。
塚田理研はめっきで新素材(カーボンナノチューブ等)の可能性を追求します
このコラムでは注目を集める素材「カーボンナノチューブ」と、活用の可能性を広げるめっき技術についてご紹介しました。
カーボンナノチューブは現在研究途中の物質ではありますが、その優れた性質から、自動車部品や電子機器、半導体デバイス、またパソコンの筐体など、幅広い分野での活用が期待されています。
なかでも、めっき技術との組み合わせによって機能性をさらに高められることから、カーボンナノチューブに対するめっき技術の研究が活発に進められており、今後の技術の発展に期待が寄せられています。
塚田理研でもVGCFへのめっきなど、新素材の開発につながる研究開発に取り組んでおります。カーボンナノチューブのめっきに関するご相談など承っておりますので、課題がありましたらお気軽に以下の窓口までお問い合わせください。
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