三価クロムめっきの黒色について
三価クロムめっきは低環境負荷のクロムめっきであるため、これまで汎用的に使われてきた六価クロムめっきの代替技術として、切り替えが進んでいます。
三価クロムめっきは使用する薬品によって色のニュアンスが異なり、黄みがかったシルバー色、黒色が代表的な色味として存在し、求める意匠性に合わせて選択されます。
三価クロムめっきの色味は、メーカーによって異なるため、色合いを重要視する場合には予め確認をすることをおすすめします。
(※塚田理研の三価クロムめっき(黒色)は、3種の色味を展開しております。)
このコラムでは、三価クロムめっき(黒色)の皮膜特性や用途、従来技術との違いについてプラスチックめっきの塚田理研が解説します。
三価クロムめっきの皮膜特性
三価クロムめっきの皮膜特性についてご紹介します。
前述の通り、三価クロムめっきは使用する薬品によって色味が異なりますが、色による機能性に大きな違いはありません。
三価クロムめっきの皮膜特性は以下の通りです。
- 耐食性、硬度、密着性に優れる
- 結晶構造は非晶性
- 厚付けは不可
- めっきの析出速度は遅い(従来と比べ、時間を要する)
三価クロムめっきのめっき皮膜は、処理の工程中に三価クロムが金属クロムに還元されるため、最終的なめっき皮膜に三価クロムは含まれません。
(六価クロムめっきも同様であり、いずれのクロムめっきもRoHS指令に対応しています)
三価クロムめっき(黒色)の用途
黒色三価クロムめっきの用途についてご紹介します。
(※当社にご依頼いただいた製品の一例です)
- 自動車の車内外装部品
- 釣具(リール)等
その他にも、家具や装飾品(アクセサリー)、カメラの部品などで黒色三価クロムめっきが選ばれています。
自動車への適用に関しては、これまでの黒色の三価クロムめっきは耐食性、指紋性に劣るため、高い品質要求が求められる自動車部品での採用は困難でした。
しかし、要求レベルを満たす黒色三価クロムめっきの提供が実現したため、現在は高級自動車を中心にご活用いただいております。
従来のクロムめっき(六価クロムめっき)との違い
従来の六価クロムを用いたクロムめっきと、三価クロムめっきの違いについて以下の表でまとめました。(プラスチックへめっきした場合の違いとなります)
ここでは、色調・性能・環境性・コストなど、両者の主な違いをわかりやすく比較しています。
三価クロムめっき | 六価クロムめっき | |
色 | 黄みのある、または黒色のシルバー | 青白いシルバー |
耐食性 | 〇 | ◎ |
硬度 | ◎ | ◎ |
耐熱性 | 〇 | 〇 |
析出速度 | 遅い | 速い |
厚付け | 不可 | 可 |
コスト | 高 | 低 |
めっきの用途 | 加飾性 | 加飾性 機能性 |
最も大きな違いは「環境」と「安全性」
これまで、クロムめっきには安価で扱いやすい六価クロムが汎用的に用いられてきました。
めっき工程では毒性の強い六価クロム化合物を使用しますが、めっき工程で金属クロムに還元されるため、めっき品の安全性は高く、RoHS指令にも対応しています。
現時点では問題のない技術ですが、環境問題や安全性への意識が高まっていることから、六価クロムの持つ毒性が問題視され、「六価クロムを使わないめっきプロセス」のニーズが増加しています。
一方で三価クロムめっきで使用する三価クロム化合物は自然界や人の体の中にも存在する物質であり、六価クロムと比較すると毒性が低いことから、安全性の高い物質とされています。
また、今後より厳しくなると予想される環境規制にも適応しやすい「持続可能なクロムめっき」として三価クロムめっきは注目を集めています。
三価クロムめっきとクロメート処理との違い
三価クロムめっきとクロメート処理との違いについてご質問をいただくことがあります。両方ともクロムを用いる表面処理であるため間違われやすいですが、全く異なるものです。
【三価クロムめっき】
三価クロムを用い、製品の表面を金属クロムで覆うめっき処理。加飾性や機能性が得られる。
【クロメート処理】
三価クロム、または六価クロムを用い、主に亜鉛めっきの防錆を目的に行われる化成処理。
※六価クロムを使用する場合はRoHS指令の対象となります。
※当社では、いずれのクロメート処理も行いません。
塚田理研の黒色三価クロムめっきについて
プラスチック専門のめっきメーカーである当社、塚田理研では各種クロムめっきのご依頼を承っております。
黒色の三価クロムめっきにも対応しており、3色の黒色を提供しております。
黒色三価クロムめっき(3色)
TI | ![]() |
深みのある黒い色調が特長です。六価クロムを使わないクロムめっきとして開発されました。 自動車への採用が最も多い黒色です。 |
TB | ![]() |
TIと比べると青みのある黒色をしています。 |
B3 | ![]() |
最も黒味が強い色調です。漆黒めっきとも呼ばれています。黒光りした金属感が重厚感を演出します。 |
※黒色の他にも、白色三価クロムめっきも提供しております。詳しくは以下のコラムページをご覧ください。
光沢感の調整で多彩な「黒」を表現
サテンめっきによる「光沢感の調整」によって色の印象を変えることも可能です。
クリアな輝きから真珠を思わせるような光沢感まで、幅広い表現が可能です。
重厚感や高級感のある黒色三価クロムめっきと組み合わせることで、更にリッチな黒の表現が可能で、色調の選択肢が広がります。サテンの強弱はめっき条件で調整可能ですので、ご要望に応じた色調にて加工いたします。
サテンめっきは欧州のデザイナーからも高く評価いただき、自動車車内外部品をはじめ、さまざまな製品でご採用いただいております。
黒色の表現の幅が広がる、三価クロムめっき以外の色の種類
色味にこだわる場合は、三価クロムめっき以外の「黒」の選択肢もお選びいただけます。
例えば、イオンプレーティングではシルバー調からピンクゴールド、青色などの多彩な色をご用意しており、黒色にも対応しております。金属ならではのリッチな質感のまま、まるで漆を塗ったかのような深い黒の表現が可能です。
また、めっきだけでなく塗装や特殊印刷にも対応しているため、さまざまな黒色の表現が可能です。
お客様のお求めの意匠性や機能性に応じた表面処理のご提案が可能ですので、色味に関する表現で課題がありましたら、是非お気軽にご相談ください。
意匠性を要求する表面処理のご相談は塚田理研まで
黒色三価クロムめっきについて、皮膜特性や用途、クロメート処理との違いなど、広く解説いたしました。
三価クロムめっきは従来技術と比べ、環境や人への影響が少ない「優しいクロムめっき」です。当社では、低環境負荷の技術をお求めのお客様に向けて、三価クロムめっき(黒色、白色)、また六価クロムを一切使わないめっき工法「クロムフリーめっき工法」を提供しております。(従来の六価クロムを使用したクロムめっきにも対応しております)
各種クロムめっき、難素材へのめっきに関するご相談に対応しておりますので、プラスチックへのめっきに関する課題がございましたらお気軽にご相談ください。
【お問い合わせ先】
本社:0265-82-3256
東京営業所:042-444-1287
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